LE CHOCOLAT DE H 吉川美南店
ここでBean to Barを始めるという話を聞いてから約3年。
待ちました。
道のりは思ったよりも長かったようですし、そこには外からではわからない多くの苦労があったようです。
しかし、出来上がった12種のタブレットは、想像以上の完成度でした。
12種類のうちの3種類はFarm to Bar。ペルーにこだわって農園を購入し、ペルーだけでも、カカオブランコ、チュンチョ、ナティーボの3種類のタブレットがあります。
それ以外はBean to Barです。2種類はハイカカオミルクチョコレート。
タブレットは、それぞれのカカオ豆の個性を引き出したものになっています。
まるで教科書のように、それぞれの産地のカカオ豆の個性を引き出され、やや粗さの残る舌触りのチョコレートの中に、カカオのそれぞれの個性的な風味をぎゅっと閉じ込められています。
こだわりはロースター。
辻口さんがパリのサロン・デュ・ショコラで出会った、ショコラトリー・モランさんのチョコレートへの想い、6年かけてたどり着いたこだわりが、ここに詰まっています。
このロースターを使用するためにBean to Bar計画は1年以上止まってしまっておりましたが、今回のタブレットを頂くと、そのこだわりがよくわかります。
ネガティブにもなりそうな発酵の香りも大事にしていて、ローストし終わったあと香りが逃げないように一気に温度を下げたり、コンチングの時間などに気を遣っています。コンチングを長くすると滑らかにはなるのですが、どうしても香りが飛んでしまうので、コンチングの時間を軽減して、香りをしっかりと残すようにしています。
また、時間をかけたことで、カカオも熟成の可能性も感じられたようで、出来立てのタブレットをテイスティングした時はまずくて、練習用に取っておいたものが、4か月たったら花開いて、めちゃくちゃおいしいということもあったようです。どれなのかかなり気になります。
■フルーツカカオティ
カカオハスク、カカオパルプ、ラズベリー、ライチ、ライム。
プチプチとしたラズベリーの食感もあり、フルーティーな中にほんのりとカカオの風味があり、これは本当に美味しかった!
■カカオティー
オーガニック農園から収穫したペルー産チュンチョのカカオハスクから抽出したものです。
旨味もあるけれど、すっきりとした飲みやすいカカオティーでした。
カカオティーも進化している。チュンチョの豆の風味なのかな?
■テイスティング
1. PÉROU Cacao Blanco 70%
レーズンの皮のような渋味が香る。ほんのりと青リンゴのような酸味のある香り。
柔らかな甘味とほのかなミルキー感を感じたと思ったら、次の瞬間渋味のある酸味が鮮烈に広がる。オレンジやグレープフルーツ、ライムのような鮮烈な柑橘の酸味と、ほのかな発酵の熟成感、ブドウの皮のような収斂味のある渋味が、一気に融点に達したように融解していく。口どけが早く、ややオイリー。それでもパウダリーな舌触りで、舌に残る粒子感がある。口に入れるとフレーバーが一気に広がり、スーッと消えていく。余韻にオレンジピールのような酸味とほのかな苦味、渋味が残る。
チョコレートが果実から作られていることを一気に思い知らされる、潔ささえ感じさせる1枚。
2. PÉROU Ccacao chumcho 70%
発酵感のあるヴィネガーのような酸味のある香り。マンゴーやパッションフルーツのようなトロピカルフルーツの香りがほのかに香る。
口に入れるとクリーミーで、その中からはヴィネガーの風味が徐々に広がっていく。中盤からマンゴーやパッションフルーツの濃厚な甘味と、トロピカルな酸味が出てきて、ラストに柔らかなコーヒーの焙煎香と、カフェラテのような柔らかい乳感出てくる。
3. PÉROU Cacao amazon native 70%
渋味のある茶のグリーンの香り。発酵感のあるヴィネガーの香り。アーモンドのようなナッティな香ばしさ。ほのかなココナッツの甘味やトロピカルフルーツ香り。
渋味のある抹茶のようなタンニン、発酵感のあるヴィネガーの酸が喉までふわっとのび、トロピカルフルーツがふわりと重なって、アフターはシナモンや生姜のようなスパイシーさが残る。オイリーで、口どけは早く、瞬間ごとに味わいに変化がみられる。
4. VENEZUELA 70%
発酵感のあるヴィネガーの酸、メロンの青い瓜感、ほのかなスモーキー感と、オレンジのような柑橘感。
ウイスキーのような熟成されたアルコール感、葉巻のスモーキー感、奥からはオレンジピールの酸味とほのかな渋味、アフターにミントのようなすっきりとした冷感。ややゆったりとした口どけ。オイリーさもあるが、どっしりとしたボディ感が最初から最後まである。アフターの余韻も、ウイスキーを飲んだ後のような重低音の余韻。大人のチョコレート。
5. MADAGASCAR 70%
干された麦のような太陽の香り、焼きたてのブリオッシュのような香ばしさ。ほのかにベリーの甘酸っぱい香り。
口に含むと、ベリーの甘酸っぱい風味が一気に広がる。ブルベリー、ラズベリー、ストロベリーの複数のベリーの甘酸っぱさが重なり合い、そこに生クリームを加えたような厚みと、ダージリンティーのような渋味と、ほのかなマスカット香。ややゆっくりした口どけに、アフターに焼かれたバターのブリオッシュのような芳ばしい甘味が出てくる。
6. République de Trinité-et Tobago 70%
一気にスモーキーな香りが立ちあがる。葉巻のスモーキーさの中に、ほのかに熟成された酸も感じられる。ウイスキー樽のようなアルコール感とフルーティーな酸。
葉巻のようなスモーキーさが口の中いっぱいに広がる。ややゆったりした口溶けで、クリーミーな甘味もある。パウダリーな舌触り。重厚感のある味わいは、熟成されて角の取れたウイスキー、そこにフルーティーなブランデー、ラムのほのかな甘味。食べ進めるほどに甘味を感じられるようになる。
7. ÉQUATEUR 70%
甘いバニラ、白い花、蜂蜜。フローラルで、甘い香り。オレンジピールのような柑橘の香り。
口に入れるとほのかにオレンジピールのような苦味と渋味、強い酸を感じるが、徐々に丸くなり、フローラルな華やかな酸が広がり、バニラのような甘味、蜂蜜のような甘味が広がる。
強く、弾けるような、鮮やかで鮮烈なフレーバー。ゆったりとした口どけとパウダリーな舌触り、ひんやりとしたハーブ感も感じられる。
8. VIETNAM 70%
カラマンシーのような柔らかい酸のある柑橘の香り。マンゴーやパッションフルーツのようなトロピカルフルーツの香り。
こちらはMAROUのカカオ豆。
口に含むと、ココナッツのようなトロピカルな甘味と、黒糖のようなミネラル感のある複雑な甘味、マンゴーのような濃厚なフルーティーさと、パッションフルーツようなほのかな酸味。ゆったりとした口溶けと、パウダリーな舌触り。酸もあるが、全体的にしっかりとしたボディ感があり、重奏感のある味わい。
9. PHILIPPINE 70%
発酵感のあるヴィネガーの酸、カシューナッツのような柔らかいナッティーな甘味。ほのかなトロピカルフルーツの香り。
口に含むとパウダリーにゆったりと溶け、香ばしさとともに、ココナッツのようなトロピカルな甘味が広がっていく。ココナッツシュガーを使っているのかと思うほど。ミネラル感もあり、柔らかでふくよかなナッティーの香ばしさと、コーヒーのような香ばしさがある。
10. TANZANIE 70%
ゲイシャコーヒーのような柑橘系の酸味と焙煎香。発酵感のあるヴィネガー。
口に含むと青リンゴのような爽やかな酸味が広がる。果汁が溢れるように、シャキシャキとした瑞々しさを感じる味わい。すっきりとクリアな酸味で、余韻まで爽やか。チョコレートだけとは思えないような味わい。アフターに、黒糖のようなミネラル感のある甘味が上がってくる。
11. PÉROU Chocolat au lait 50%
香ばしく、苦味のある香り。ほのかな酸味のある発酵臭。ミルクの甘味のある香り。
やや固めのドライなテクスチャー。
ほのかな酸味、渋味のある味わいの中から、ミルクの濃厚な甘味がじんわりと広がっていく。オレンジピールのような酸味のある味わいと、香ばしい深入りコーヒーのような味わいにミルクが混ざるので、カフェラテのような味わい。甘味は控えめで、カカオの味わいも感じられるが、酸味や渋味はミルクにマスキングされて、丸味のある味わいになっている。余韻にほのかな渋味が舌に残る。
12. VENEZUELA Chocolat au 50%
レーズンの皮のような渋味のある香りに、甘いミルクの香りが混ざる。ツンの鼻をつくヴィネガーのような発酵臭がある。
濃い茶色を残したミルクチョコレート
甘いミルクの風味が一気に広がり、コーヒーのような焙煎香が少しずつ重なる。粒子を残したテクスチャーが舌の上で香りを弾けさせる。甘いミルクの中から、レーズンのような渋味や深みのある甘味がふんわりと湧き上がる。甘味はしっかりとあるが、ほのかなフルーティー感、そして余韻にはハーブのようなすっきりとしたグリーンも感じられる。
■生ハムとセミドライ無花果のミルフィーユ
焼き上げたパンに、クリームチーズ、ナッツ、イチジク、生ハムを挟んであります。味付けにブラックペッパー、バルサミコ、ローズマリー。
ここで塩味を用意してくれる優しさに感動。
これまでのチョコレートの甘味をリセットしてくれて、食感も味わいも出来立ての美味しさ。
■ペルー産カカオアマゾンナティーボを使用した新作プチガトー
ナティーボのチョコレートをベースにした濃厚なチョコレートムース。下にカカオのクッキー生地のようなものが敷かれていて、ムースの滑らかな食感と、サクサクとした食感の2勝に仕立てられている。
ムースにすることでより口溶けがよいクリーミーな味わいとなり、ナティーボの発酵感を残しているものの、発酵の酸味はマイルドにしつつ、チョコレートの濃厚さを保ち、またクッキー生地がカカオの香ばしさを際立たせている。
■新作カカオビーンズ
ペルーのチュンチョ、ベトナム、トリタード・トバゴの3種類のカカオを、ロースターで焼いたものを、一度飴がけして、そこからその品種のシングルオリジンチョコレートでコーティングしたもの。
飴がけしているので、そこまで3種類の個性は出ていないが、食べやすく、美味しく食べられる。
このあとピカピカのラボを見学。パトリック・ロジェでもご活躍中の山内さんが丁寧に説明してくださいました。
こちらは次回!
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