最近多くなってきましたクラフトジン。ジンブームの流れもあり、多くのオリジナリティあふれるジンが次々と作られ、発売されています。
ジンの魅力は、自由さだと思っています。
アルコール度数と、ボタニカルにジュニパーベリーを主に含めるというこさえ守っていれば、それはジンと定義されます。ボタニカル、つまりフレーバーを決める要素がとても広く、蒸留した後も、ウイスキーのように寝かせることなくすぐに美味しく飲むことができる。
私がジンに興味を持ったのは、そのボタニカルに「カカオ」を使っている蒸留所があったことから始まります。
今回のシンポジウムで集まった3つの蒸溜所では、3つとも季節限定ではありますが、カカオを使ったジンが発売されています。
Master Class Masters of Distiller ~日本が誇る気鋭の蒸留家たちによるシンポジウム~
■虎ノ門蒸留所 一場鉄平氏 ■NUMBER EIGHT DISTILLERY 深水念大氏 ■東京リバーサイド蒸留所 山口歩夢氏
3つの蒸留所はすべて一人で製造されている。ジンは可能性が無限にあり、自分の頭の中にあることを形にしやすいので、一人の方がやりやすいとも言う。 蒸留後、すぐに飲んでもらえる環境にある都市型蒸留所というのもこの3つの蒸留所の特徴。 飲む人専門からレストラン併設の醸造家に転身した視点から、レストランのバーテンダーの視点から、大学院で醸造の勉強をした視点からと、それぞれの視点からジンを作られているのが、ジンの可能性の広さをさらに感じさせてくれるシンポジウムでした。
■虎ノ門蒸留所 “TOKYO LOCAL SPRITS”、東京の日常酒を目指し、東京の焼酎、青梅の湧き水を使用し、通常版のCOMMON GINと、昨年1年間で16種の季節に合わせた東京の素材を使って作られる。 居酒屋併設なので、食中酒としてソーダ割等で飲まれることを想定にして作っている。 一場氏はデザインや企画の仕事をしていて、はじめは虎ノ門横丁のプロデューサーとして参加していたが、いつの間にかジンを作ることになっていた。ポートランドでクラフトビールを飲んで可能性を感じ、飲む専門から醸造家へ転職。 辰巳蒸留所のジンを飲んだ時に、こんなジンを作ってみたいと思った。 ベースは、八丈島と新島の麦焼酎とチコリ。 ボタニカルは混ぜずに単一で作っている。 今年は辰巳蒸留所の辰巳さんと一緒に青ヶ島のいも焼酎を使ったアブサンも製造。
□COMMON GIN →初めにボタニカルの苦みがくっと来るが、その後は甘味に変わっていく。
□アブサン
→ピリピリとしたアルコール感とともに甘味が強く感じられる。グリーンな味わいと黒糖のような深い甘味。
■NUMBER EIGHT DISTILLERY
横浜のハンマーヘッドの中にある「QUAYS pacific grill」というレストラン併設の日本初のディストラリーとして2019年開設。「QUAYS pacific grill」では、コーヒーの焙煎、クラフトビール、クラフトジンを製造している。
アーノルド蒸留器で、1回の製造量は100ℓ。醸造所としての法的認可のためには年間6000ℓを蒸留する必要がある。
ボタニカルは、レストランで使用されるイエルバフナ、コーヒー豆(商品化から外された規格外のもの)、フレッシュポップ、アボカドの種などを使用。
フレッシュボタニカルにこだわって製造している。
ベースは月の井酒造の粕取り焼酎。
レストランとして食中酒に進める場合、ボンベイサファイヤや、ナンバーテン程度の価格にする必要があり、日本のクラフトジンとしてはかなり低価格を維持。
飲みやすく、シンプルで、飲みなれていない人からジン好きの人まで満足できるようにしている。
ジンは料理のイメージでスパイスを足すように味を設計している。
バーテンダーなので、カクテルを作る合わせる材料は、ボタニカルとして組み合わせても合うと確信し、味を設計している。
加水で濁るのは油分が多いため。
□NUMBER EIGHT
→フレッシュなボタニカルの素材感を感じる。すっきりとしていて、一気にふわっと広がるため、余韻は短い。
□NUMBER EIGHT DOUBLE →濃縮感があるが、余韻はすっきりとしたまま。
■東京リバーサイド蒸留所 大学時代の授業でジンに無限の可能性を感じ、2016年に季の美が発売されたときに、やりたかったことがここにあると確信。 委託醸造から始まり、The Ethical&Spritsとして独自の蒸留酒の製造を始めたのが2021年。 いろんな酒造の粕取りを使用して醸造している。 現在粕取り焼酎を使用している蒸留所は100か所以上あるが、酒取りは依然として産業廃棄物として破棄されている。まだ酒粕から再蒸留はできていないが、いずれはそこから再生したいと考えている。 蔵前に蒸留所があり、蒸留器は中国製。 7月に蒸留所の2階にバーをオープン予定。
LASTシリーズは飲む香水をイメージ。
REVIVEシリーズは、某ビールメーカーからビールがコロナ禍で余っているという話を聞いて、ビールを買い取り再蒸留することで、日持ちのする新しいお酒を生み出そうとした。 VIVACEは、某日本酒酒造から出荷できなくなった日本酒を買い取り再蒸留したもの。ボタニカルは、放置された茶の木、みょうがの茎など。
CACAO GINは、パイナップルのような香りの粕取り焼酎をベースに、フーズカカオのカカオのハスクをボタニカルに使用。カカオハスクは通常捨てられるが、油分が多く、水分が少ないので香りが残りやすい。
今後はエスプレッソの出がらしの蒸留も考えている。コーヒーとしてはすでに役目を終えたものだが、意外に香りは残っているので、蒸留すると香りがでる。 200ml~300mlとミニボトルでの販売は、BtoCをイメージしているため。
シナモンや、リコリス、スターアニスなどの甘みのあるものをボタニカルに使用することで、アルコールの度数を感じさせないようにしている。香りだけでなく味をつけることで飲み口をマイルドに仕上げている。
□CACAO GIN →香りはフルーティで梅のような香り。カッとするアルコール感で、カカオ感はそれほど感じないが、甘味がありすっきりとしている。
□VIVACE →甘味があり、ピリピリとしたアルコール感はない。洗練された味わいで、香水のような香り。余韻も長く、甘味が長く残る。
香気成分からジンの味わいを設計。
例えば、生のしいたけ。生にしか存在しない香りがあるが、そのままで食すと毒がある。
料理では表現できない濃縮された淡い香りを蒸留することで可能にできる。
目標は世界最高のごみ箱。 現在は木を原料にしたジンを研究している。 木はもともと糖とでんぷんでできている。 分解できないギフニンとセルロースからできている。露出したセルロース=でんぷんであり、糖分。それを酵母に食べさせて、発酵させることで、アルコールを抽出できる。 現在、杉と白樺で製造したものは食せるというところまで確認できている。 2回蒸留して約40度手前のアルコール度数。 次は、クロモジ、ミズナラ、桜の木等で試してみたい。
◆ジュニパーベリーの違いの可能性 ・蒸留所に置いておくと乾燥が進み小さくなってしまう。どの段階で使用するかでも変わってくる。 ・ジュニパーベリーの亜種も存在する。クロアチアには真っ赤なジュニパーベリーもあり、日本では、伊豆半島、房総半島、沖縄等で見られるオオシマハイネズなどがある。日本産のジュニパーベリーの亜種を使用することも可能性としてある。
◆蒸留器について ・減圧式の方が香りの抽出の精度が高い。 ・素材力はある。銅がよいかどうかはわからない。ステンレスやガラスの方が素材の変化がない。 ・自分の持っている機器をよく知り、与えられたものにとことん向き合い、火加減、機材、素材によって変わることを知ること。
わからないことがまだまだありますが、ちょっとだけ世界が広がった気がします。
今回ご紹介された蒸溜所は、レストランやバーを併設していますので、蒸留所を見ながらジンを飲むことができます。
気になる方はぜひ伺ってみてください。
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